Last Update : 09/30/2001



読書の欄

書   名   : Taguchi Methods for Robust Design
著   者  : Yuin Wu, Ala Wu
発 行 所  :ASME PRESS

矢野 耕也 (株)ツムラ

品質工学の初期から関わりがあり,学会誌の英文アブストラクト作成・校閲で会員にはおなじみで,アメリカ・台湾で活躍されておる呉玉印先生,およびご子息のAlan氏の共同執筆によるタグチメソッドの最新の単行本である。一言でいえば,品質工学応用講座第1巻の2000年版みたいなものに近いといえる。どちらかといえばわかりやすい方であり,それほど難解な英文ではないと思われる。数式を丁寧に書いておられるので,英文を読み飛ばしても,数式を把握している人には,いわんとすることの内容の理解が可能である。特に,事例として具体的な数値を入れて説明しているので,計算で躓く人にも親切ではないかと思われる。見方によっては,数式が丁寧なのが災いして逆に取っつきが悪く,統計家,理論家向けだという言い方もできるが,実践する者には数式が親切に越したことはないと思われので,このあたりは評価の分かれるところであると思われる。

最初の部分は,タグチメソッドの哲学的な部分,つまり品質工学の考え方についてページを割いてあり,ロバスト設計とは何か,直交表の効用やわりつけ,SN比の意味やその概念などが記されている。ここはもし日本語であれば,意外に多くの人に理解が出来るのではないかと思われる。基本的にはゼロ点比例式での説明が中心であるが,SN比のさまざまなタイプについても丁寧に触れられており,2信号の場合のSN比,行により信号因子の水準が異なる場合,分割型のSN比,化学反応のSN比,真値不明の場合の信号因子の作り方,等比間隔の信号因子など,具体的に詳しく書かれている。

その後になって,静特性のSN比が登場する。望小特性,望大特性,望目特性とお決まりだが,他にも誤り率の例,標準SN比などがある。それと,電気特性(複素数の場合)について多くのページを割いている。そして,品質工学では珍しいユーデン方格に関する記述,またデータに欠測値がある場合もそれぞれ章をたてて書かれている。終わりの方には,日本でも話題になっているロバスト設計による技術開発,つまり機能性評価についても触れられており,最近の品質工学で主張されているエネルギー変換の考え方について,わかりやすく書かれている。このあたりまで含まれていることを考えると,コンパクトによくまとめられていると思う。最後には簡単に37事例が示され,用語説明で締めくくられている。全体によく整理されており,多大な量と変遷過程を有する品質工学のエッセンスをうまく濃縮しているという印象である。 もちろん全て英語であるから,誰でもわかるというものではないし,日本語でさえ難解といわれる品質工学であるから,お手軽というわけには行かないと思う。しかし品質工学の上級者,またアメリカや英文で発表しようとしている者には,手っ取り早い英文総説ではないかと感じられる。

品質工学絡みでアメリカに行った人は,誰でもこのお二人に世話になるものだが,長年に渡り,アジアとアメリカで指導に当たってきた呉先生と,ASIで中心となって指導をしているAlan氏の豊富な経験が,当書のいたる所で生きていると思われ,今後とも色々とご活躍を期待するところである。