2016年4月1日

品質工学会 審査部会

2016年 品質工学会 学生賞

 これからの品質工学の持続的な発展を図るには大学など教育機関における品質工学の取り組み活動が重要である。品質工学会学生賞はこの活動を支援し,教育機関における品質工学の存在感を高めるための,優秀な学生の研究に対する賞である。

 応募研究の中から,審査部会にて厳正に審査を実施し,下記1件の研究を選定した。受賞した研究は,学生であることを抜きにして,品質工学の研究として研究テーマと方法,考察など一般会員の平均以上の研究の質である。

 学生賞は,現時点での評価だけでなく,将来の期待を込めて評価している。研究をさらに進め,より大きな成果を上げることを期待する。あわせて,受賞者が将来の品質工学を担う人材となることも期待する。

【学生賞受賞研究】
題 目 品質工学によるエネルギの比例性を活用した新しい材料評価法の提案
受賞者 藍 立明
(日本工業大学 大学院工学研究科 機械システム工学専攻 修士2年)
指導教員 二ノ宮進一 准教授
研究の種類 修士論文

受賞研究の概要 (応募の際に受賞者より提出された研究概要を以下に記す。)

 品質工学は,技術を評価する汎用技術である。本研究では,品質工学による機能性評価で最適化されたロバストな固有技術が,別の技術の機能を評価する新しい評価法として応用できる可能性があると考えた。

 火力発電用燃料の石炭を粉砕する大型ローラ等は,使用時間や頻度に伴って偏摩耗するため,現地での肉盛溶接補修が行われている。これまでの研究で,補修作業の自動化の隘路となっていた仕上げ研削工程について品質工学に基づくパラメータ設計を行い,加工安定性の向上および自動化に成功した。一方,現地で硬化肉盛溶接補修をした後の製品の品質をオンラインで確認する方法は極めて少ない。実際には,外観検査や形状測定,打音検査,硬さ試験程度に限られ,補修された製品に要求される耐摩耗性をチェック・管理する方法はない。

 この課題を解決するため,本研究では,品質工学で得られた成果を活用して,大型プラント部品の補修に用いる硬化肉盛溶接材料の新しい材料評価法を提案した。砥石による硬化肉盛溶接材料の研削技術は,発想を転換すると硬化肉盛溶接材料の耐摩耗性試験として考えることができる。この研削技術は,砥石主軸のエネルギと材料除去量の比例性を基本機能とした機能性評価によって,非常に安定した除去加工が実現できるようになった。この基本機能(エネルギの比例性)を材料評価に応用することで,硬化肉盛溶接材料の耐摩耗性や耐久性の評価だけでなく,硬化肉盛溶接の施工管理までも行うことが可能となる。

 パラメータ設計で最適化した研削技術が,材料評価へ応用できるか否かを確かめるため,硬度が異なる数種類の硬化肉盛溶接材料に対して実験した。その結果,新評価技術によって,材料の耐摩耗性のばらつきがSN比によって評価できること,施工において発生した溶接不良が検出できることを明らかにした。また,化学物質の検量線のように,硬化肉盛溶接材料の種類に対応した固有の耐摩耗直線が存在することを明らかにするとともに,この直線の傾きの大小が耐摩耗性の指標となることを見いだした。さらに,材料の耐摩耗性は,材料の硬さに必ずしも一致しないことを明らかにした。

[外部リンク] 日本工業大学: Topics「機械システム工学専攻の藍君が品質工学会の学生賞を受賞」

2015年 品質工学会 学生賞 について