| 品質工学会 審査部会 | |
2011年度 |
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品質工学の優秀論文に授与される〔財団法人精密測定技術振興財団 品質工学賞 論文賞〕に,前年(2010年)に学会誌に掲載された研究論文37編より下記の金賞1編と銀賞3編が選定された。 |
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| <財団法人精密測定技術振興財団 品質工学賞 論文賞> | |
| ○金賞 | |
| 論文名: | 「品質工学の技術展開としてのあり方の研究 -トライデントからみる技展スタイルの研究-」(Vol.18 No.5) |
| 受賞者: | 吉澤正孝 |
| ○銀賞 | |
| 論文名: | 「茨城地方の地震発生のパターンの定量化と予測(1) -つくば地区の地震パターン-」(Vol.18 No.2) |
| 受賞者: |
早川幸弘*1 、水谷淳之介*1、山本桂一郎*1、鴨下隆志*2、矢野 宏*2 |
| ○銀賞 | |
| 論文名: | 「時刻歴テータを誤差因子とした過渡時の基本機能の研究」(Vol.18 No.6) |
| 受賞者: |
渡邉泰行 |
| ○銀賞 | |
| 論文名: | 「標準化誤圧を応用したRT法 -パターン距離を利用しない解析-」(Vol.18 No.5) |
| 受賞者: | 矢野耕也*1、早川幸弘*2、鴨下隆志*3 |
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| 選定理由: | 賞は現時点だけではなく、将来を予測しての評価である。発展の可能性が高い研究を評価したい。現時点では荒削りであるとしても、それは将来改善されていくと考える。また、これまでの挑戦の積み重ねが品質工学を発展させたことを考えて、挑戦する研究を評価したい。受賞論文は4件で、新たな研究分野である技術展開の1件、MTシステムの2件、パラメータ設計の1件である。 技術展開は田口玄ーのいう技術戦略(技略)の現実化の研究である。品質工学は個別技術課題を対象として研究が発展してきた。それがパラメータ設計であり、オンライン品質工学であり、MTシステムであった。しかし田口玄ーのいう技術戦略(技略)についての研究はこれまであまりなされていなかった。普及の研究として取り上げられた例はあるがわずかである。技術展開の論文は技術戦略(技略)に挑戦した意慾的な研究である。 MTシステムは、多次元データを取り扱う。正常と異常の区分けは企業における検査などで実用化されているが、これからの実用化に向けて研究が進められている分野として診断と予測とそれらに共通する識別がある。識別は文字認識のようなパターン認識である。地震の研究は、地震発生前の振動パターンの認識で、地震予測を行っている。実用化の道は容易ではないが、挑戦する研究を評価したい。 誤圧という新しい考えの手法がMTシステムに登場した。誤圧そのものは田口玄ーが1951年には提唱していた概念だが、それは長らく取り上げられていなかった。新たにMTシステムで取り上げられた誤圧は大きな可能性を秘めている。 パラメータ設計は制御系の最適化で、制御系という新しい対象、新しい機能評価法の事例の研究を評価したい。品質工学は事例を重視する。新しい手法の提案がないと嘆く人もいるが、新しい事例が新しい手法の必要性をもたらし、新しい手法の誕生につながる。品質工学の未開拓な分野・対象はまだまだ多い。会員各位の新しいことへの挑戦を期待する。 受賞論文ごとの個別選定理由は次の通りである。 |
| 金賞: | 「品質工学の技術展開としてのあり方の研究 -トライデントからみる技展スタイルの研究-」(Vol.18 No.5) |
| :本研究は、田口玄ーが提唱した品質工学の技術戦略を現実化するためには、戦略の展開のためのマネジメントが必要であると考え、これを技術展開(技展)と定義し、具体的に考察を行った。すなわち、矢野宏らの「広島の品質工学の活動について学校・企業・新聞のトライデント」(品質工学Vol.15
No.2) を分析し、技術展開を成功に導くための要素やキーパラメータを明らかにしている。まず、目的と検討の視点を定め、論文内容の個別分析から要素を抽出して、相互関係を時系列的に分析した結果として、技術展開には人材の開発が重要であり、それには心技体評のモデルが普遍的であると提案している。また、知の交流モデルとしてトルネードモデルの提案をしているがさらなる肉付けが望ましい。技術戦略(技略)の具体化への取り組みが評価された。また、社会科学的な新しい研究方法への挑戦も評価された。 本研究を嚆矢として、技術戦略(技略)および技術展開(技展)の研究が広がることが期待される。 |
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| 銀賞: | 「茨城地方の地震発生のパターンの定量化と予測(1) -つくば地区の地震パターン-」(Vol.18 No.2) |
| 本研究は,地震発生前における地面の振動パターンの周期分析結果をMTシステムのRT法による距離に変換し,それを特性値として,両側T法にて地震予測を行っている。結果として予測精度はSN比で0.18dbである。田口玄ーは「せめて0dbの予測精度は必要である」というが、先行研究では-14dbであったことからすれば大幅な改善であり、ほぼそのレベルを達成したといってよい。社会的に重要なテーマを取り上げたことと、予測精度はまだまだ改善の余地はあるが、精度改善に向けての研究が評価された。 また、品質工学は汎用技術であるが、その研究を深めるには専門家との議論が必要である。本論文では地震の専門家グループSEMSとの公開討論を行って,専門家の意見と批判を論文に反映したことが評価できる。専門家に必ずしも理解されなかった面もあると思うが、専門家を含め社会的に研究の価値を理解してもらうためには、時間をかけて成果を出す必要がある。 さらに、地震というだけでなく、パターン形成方法、周波数変換、フィルターなどの研究がなされ、パターン認識の方式を提案しているところも評価された。 |
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| 銀賞: | 「時刻歴テータを誤差因子とした過渡時の基本機能の研究」(Vol.18 No.6) |
| :品質工学では、最適化する対象物にフィードパック制御が入っている場合、まず制御器を外して制御対象を研究すべしといわれてきた。しかし、制御対象の機能性の向上には限界があり、自動制御を組み込むシステムは多い。自動制御を含めたシステムの最適化は必要性が高いが、これまで良い方法はなかった。 本研究は制御の中でも一番良く使われるフィードパック制御の最適化をシミュレーションで行った。フィードパック制御は目的値に追従させるのが目的だから、理想を目的値が変化したら直ちに出力も同じだけ変化すればよい。つまりコントローラと制御対象を合わせたシステムの機能とは、目標値の変量を信号とし、出力の変化量を評価特性とした動特性のシステムであると定義できる。直ちに目標値に一致し、変動も小さい方がよいので、誤差因子は時刻歴データとした。過渡現象を時間をノイズにし、ステップ変化量を信号にした動特性で解析する方法は制御システムの評価方法としては新しい提案であり、具体的事例でその有効性を示したことが評価された。利得の再現性が不十分な点は今後の課題であろう。 自動車や家電製品をはじめあらゆる製品に制御が取り込まれて制御なしには成立しえない。また、制御系に限らず過渡応答全般にも適用可能である。本事例の応用範囲は広くその経済効果は大きいと予想する。 |
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| 銀賞: | 「標準化誤圧を応用したRT法 -パターン距離を利用しない解析-」(Vol.18 No.5) |
| :MTシステムは計測の対象となる課題に対応して、多くの解法が生まれたが、最終的には田口玄ーが示唆したようにT法に収束するのではないかと考えられている。しかし、T法のうちT法(3)に相当するRT法は完成した方法ではなく、単位空間の原点が特異点になるなどの問題点があり、改善が望まれている。本研究は、田口が提唱した誤圧の考え方を取り入れて、RT法の問題点の改善を図ろうとしている点に注目したい。誤圧で得られる距離の大きさは、RT法の距離ときわめてよい一致を示すため、その妥当性はRT法に引けを取らなく、RT法の問題点を避けられる可能性のあることが示唆されている。この論文の重要なところは、田口が病気で倒れる前に、RT法の次の考えがあると言っていたが、それを探しだしたことだと思う。この成果は今後、大いに使える。論文中の地震の例では、すでに大きな成果が出ていることから、その有用性はRT法以上に大きい可能性があることが評価された。 さらに、音圧の波形データと含有成分データの事例にも適用されており、さまざまな分野への展開が期待されている。 |
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| <品質工学会 ASI賞> | |
| 論文名: | 「プレス絞り加工のCAEモデル簡略化によるパラメータ設計の効率向上」(Vol.18 No.4) |
| 受賞者: |
三田智彦*1、斎藤淳一*1、渡辺 傑*2 |
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| 選定理由: | ASI賞は米国における品質工学の普及に貢献する事例・論文を学会誌から選ぶ。この事例の細かい内容はともかく、そのスピリットを高く評価する。 Computer Aided Engineering は益々その Accuracy と Precision を追求して発展している。実機との整合性、絶対値の正確さを競っているわけである。しかし、これはバリデーションのメンタリティと言える。整合性がいいのは結構なことだが、計算時聞が何十時間もかかるのであればL54は使えないし、ましてL54の Iteration (逐次繰り返し) は望めない。それはバリデーションで使えばいいのである。韓国の某自動車会社は「それでは18台のコンピュータでやる」というほどの勢いだが、それは結局開発の効率化を考えていないと言える。シミュレーションに限らず、時間とコストをかけずに機能をいかに計測するかという技術の追求が重要なのである。QEの普及がなかなか進まない理由の一つがこのことと実感している。5日かかるのと10分で済むのでは720倍の効率がいいことになる。設計スペースの網羅を考えると、5日で1回に対して、L54×M×N として、54×20分でできるのなら5日でL54を6.7回まわせるから、1.13×1013の設計を網羅しているので11.3兆倍の効率と言える。実際には制御因子の水準が変わらない繰り返しがあるのでそれより少ないが、そのようなオーダーになる。品質工学のスピリットである。 |
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| <社団法人富山県経営者協会 品質工学賞> | |
| 論文名: | 「プリンタにおけるユーザビリティの機能性評価(2) -開発のリードタイムを短縮する方法-」(Vol.18 No.1) |
| 受賞者: | 坂本信也*1、河合靖則*2、田村希志臣*1、竹田 誠*1 (*1コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株) 正会員、*2コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)) |
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| 選定理由: | 富山県経営者協会品質工学賞は、日本の企業に貢献する優秀な論文に与えられる賞である。技術開発を通しての企業への貢献ないしは社会への貢献を重視する賞である。 本研究はユーザピリティの評価にあたって、ユーザが行う操作を表したイメージスケッチを用いて、評価者が作業を想像して感覚的に評価する新しい方法の提案である。しかし、品質工学の研究方法としては、評価方法、評価者を含めてさらに汎用性のある方法へと検討を重ねる必要がある。 これからの日本のものづくりは、設計に基づく実物づくりだけでなく、上流の設計段階が重要であるといわれている。設計の最初は頭の中に浮かんだ構想の評価である。設計図を描く前に技術者はあれこれを思いながら構想をまとめていく。当然、実物はなく、想像で構想を練ることになる。その構想設計への提案である。イメージによるバーチャルな設計においても再現性があり、しかも評価者(設計者)の能力さえも明らかになりそうである。最終では実機評価で再現性が確認されているから、経済的な効果は大きいはずである。これからの日本のものづくりにとって今後はもっと発展させる必要がある部分である。その方法を提案したことが評価された。 |
| 以上 | |