Last Update : 2012/2/11



活動内容の紹介
 関西品質工学研究会は1994年1月15日(土)に、松下電工(株)を定年退職されてすぐの原和彦氏を会長に、当時の大阪計測システムセンター所長田中健一氏を副会長として設立されました。活動は月一回の割合で研究会を開催し、実施例の検討を中心とした実践的な研究活動をモットーに様々な業種の事例に取り組んできましたが、品質工学の広がりとともに、より理解を深めるための勉強会も開いています。研究会が設立された当初は15名程度であった会員も、現在は70名を超えるまで増加し、近畿一円の多くの企業から参加されています。
 また、大阪に本研究会が設立されて後、滋賀県と京都府にも研究会が設立され、近畿地区では現在3つの研究会が活動していますが、お互いの研究成果を発表する場として、3地区合同研究会や関西品質工学シンポジウムを開催しております。
 今後も多くの方々からのご指導やアドバイスをいただきながら活動していきたいと思いますので、皆様方からのご意見をお待ちしております。また、入会希望も随時受け付けております。

 
参加費 (年間会費)
 法人会員 80,000円
 個人会員 40,000円
開催情報
 月一回(第一金曜日か第一土曜日)
 日本規格協会 関西支部で開催
連絡先
鐵見佳子(kqerg@kansai.zaq.jp)
 〒569-0085 高槻市南松原町12-18
 TEL & FAX 072-601-7717
最新の活動報告          過去の活動報告はこちら>>活動報告       
(2012.02)
2011年12月2日(金)日刊工業新聞社大阪支社にて第211回研究会を出席者29名で開催した。
1.事例相談「信頼性向上のためのTM適用方法について」(コニカミノルタセンシング 繁永伸明):光学計測機器の駆動部の摩耗に対する耐久性評価に関する相談があった。目的機能を部品を安定して搬送することとして,入力に搬送距離,出力を駆動モータの消費電力をとって評価する予定。誤差因子,信号因子のとり方,耐久性を短時間で評価する方法について議論がなされた。
2.グループ討論:4つのグループに分かれてグループ討議を実施したが,時間の都合で全体討議は行われなかった。
3.話題提供「QRG参加報告」(三菱電機:鐡見太郎):12/1開催のQRGに,元富士ゼロックスの立林和夫がエネルギー比型SN比を題材とした発表をすることになり,提案者側として参加した。これまでは議論の対象になっていなかったことを考えると,今回は議論の俎上に上がったことは一歩前進である。大きな反対意見はなかったが,エネルギー比型SN比は田口のSN比の全否定をしているように聞こえる,と言う意見があり,「エネルギー比型も田口式も,二乗和の分解は同じ。エネルギー比型は信号値Mやデータ数nの変な影響を取除いただけで,本質は全く同じ」と説明したことが報告された。
(三菱重工 高濱正幸 記)
2011年11月5日(土)日刊工業新聞社大阪支社にて第210回研究会を出席者35名で開催した。
1.「T法,RT法,重回帰分析による多次元データの解析」(神戸大学 夏木崇):アルミ缶打検検査による,最適な内圧判定手法の研究についての発表があった。振動データをFFT解析したデータを使用し,重回帰分析法,K近傍法,両側T法,RT法の比較をSN比で行った。解析の結果,重回帰分析はT法よりも良い結果となり,K近傍法ではRT法よりも良い結果となった。これは,解析に使用した未知データを実測データから作り込んだ仮想データを使用しているからではないか等の意見があった。
2.「岩手大学での品質工学実施事例の紹介」(岩手大学 清水友治):岩手大学で行われている金型技術者育成の取り組みについての紹介と,品質工学事例の報告があった。事例紹介は,加工時の異常検出にMTシステムを適用した事例,ワイヤー放電加工の精度をパラメーター設計により向上させた事例,CAE解析によるプレス加工条件や冷間押出し成形条件をパラメーター設計で最適化した事例の報告があった。
3.「今後の品質工学の課題と対応U」(マツダ 武重伸秀):技術開発をどのように行っていくべきかについての問題提起があった。品質工学のあるべき姿と技術開発の目指す姿について,過去の管理手法との融合や設計をエネルギー変換で考えるなどさまざまな提案があり,活発な議論がなされた。
4.「品質管理学会 第97回研究発表大会への参加報告」(三菱電機 鐡見太郎):9月16日に大阪大学の中ノ島サテライトで行われた品質管理学会の研究発表大会へ参加した。発表件数は19件で,企業や大学の参加者も一緒に議論しているのが印象的であったとの報告が行われた。
( シマノ 井上徹夫 記)
(2012.01)
10月7日に「第9回関西地区品質工学シンポジウム」をコラボしが21の3F大会議室で開催し,一般参加13名を含め39名が参加,講演と事例に対し,活発な意見交換を行った。
1.特別講演「東日本大地震と品質工学の役割」(品質工学会副会長 谷本勲):震災時の様子,復旧状況の報告があり,防災先進国であるはずの日本の技術になにができたか,今後どうすればよいか,複合被災を乗り切るにはといった問題が提起され,品質工学がどのように貢献できるか,日本再生のシナリオが提示された。
2.招待事例「金型用高精度切削加工における評価方法の一考察」(日産自動車 大工原友幸):対象の加工機の主軸負荷電流の測定・評価を検討したが,取代が小さいため,切削時と無加工時での差が識別できないので,切削抵抗を測定することとした。
3.事例1「ワイヤーボンディング工程へのMT法適用」(マクセル精器 近藤真澄):電子基盤の電極端子に金属ワイヤーを抵抗溶接にて接合する工程で,接合後,電気的検査を行い接合が正常に行われたかを確認している。ここにMTシステムを活用することで,ツール交換時期を予測できる可能性が見えた。
4.事例2「LED素子の機能性評価」(シーシーエス 鹿野雄一):メーカ間で測定の土俵が異なり,仕様書を相対的に比較できない。4メーカの素子について機能性評価を行った。
5.事例3「CAEによるヒートローラ強度最適化」(村田機械 大矢一幸):複合複写機において,従来のハロゲンランプによる加熱方式から面状発熱体による加熱方式に変更し,必要な時だけ,加熱するようにしヒートローラの常温時と加熱時で両端固定時のローラのたわみ量を現状のローラと同様にするとして,最適条件で目標へのチューニングを行った。
6.事例4「計画的欠番直交表の概要とパラメータ設計への適用事例」(コニカミノルタ 芝野広志):欠番直交表はソフトバグの検査効率向上を目的にL36の一部を抜き出し,少ない実験回数で効率よく2信号の組合せ試験ができるように工夫されている。9回の実験で85%の網羅率があるが,直交はしていない等の注意点もある。またパラメータ設計での因子選択に採用した事例が報告され,因子の抽出のために実験するのは効率が悪いなどの意見交換があった。
講評:関西品質工学研究会原和彦顧問
(オフィスワイ・エス 清水 豊 記)
2011年9月10日(土)日刊工業新聞社大阪支社において第208回研究会を30名で開催した。
1.「HAYST法適用事例」(三菱重工業 和田健太):工場出荷後に制御ロジックを変更した場合のバグ検出方法に関して相談があった。従来,制御ロジックの検証方法は設計者の経験に依存していたが,今後は品質工学を適用してシステマティックなバグだしを目指していく。アナログ回路の変更対応に関する方法の議論があった。また,バグ検出率(網羅率)に関する議論があった。
2.「富士通テンでの取り組みおよび評価部門でのテーマ」(富士通テン 濱田行彦):富士通テンで品質工学に取り組んでいる目的,遍歴,狙いについての紹介と評価部門で信頼性試験から機能性評価に置き換えたいということから適用事例の紹介があった。さらに,企業としての品質工学の取り入れ方,人材育成,機能性評価のやり方等について質問があり,その内容に関する議論があった。
3.「品質工学をいかに教えるかV」(コニカミノルタ 芝野広志):品質工学をいかに教えるかに関する議論があった。品質工学が持つ“三つの顔”心:技術開発論(田口哲学),技:総合評価法(計測技術),体:最適化手法(設計手法)を考え,三つの関係は,包含関係でなく,上下関係でもなく,独立な分野と考え,各々を成長させる提案があった。
(村田機械 荘所義弘 記)
(2011.10)
2011年8月6日(土)日刊工業新聞社大阪支社において,第207回研究会を開催した。出席者は30名であった。
事例1「主成分法を使ったMT法の有効性」(東芝電子エンジニアリング 澤田静雄):主成分分析によるMD値算出法では,多重共線性は主成分の固有値が“ゼロ”として現れるので“ゼロ”あるいは小さな固有値をMD値の計算から除外する。これにより,全因子を落とさずにMD値を計算できるので,系全体の異常診断を目的とするMT法での利用に有用であるとの紹介があった。
事例2「現在のMT法の課題」(シマノ 太田勝之):MT法に共通課題,TS法,T法,RT法の問題点と対策についての議論が行われた。また,エネルギー比型SN比(一般形)の紹介があった。
事例3「MT法によるスピニングリールのギアフィーリング判定」(シマノ/井上徹夫):フェースギア・ピニオンギアの噛合い伝達誤差を測定し,両振幅,歪み,安定性をT法で評価して,フィーリングの評価ができると結論付けていた。今回は,その後の製品でのデータ採取による再評価が報告され,T法とRT法,MT法の使い分け等の議論がなされた。
事例4 「品質工学の今後の方向性」(マツダ/武重伸秀):品質工学のあるべき姿と,普及,商品開発全体の仕組みと道具の整備,公害・使用コスト評価指標の整備の3項目の課題の観点から議論がなされた。
(三菱重工 高濱正幸 記)
2011年7月1日(金)日刊工業新聞社大阪支社において,第206回研究会を田口伸および立林和夫の両氏を招聘して開催した。出席者は43名であった。
講演と研究会メンバーからの相談テーマを2テーマ検討し,活発な議論が行われた。終了後には懇親会を開催し,盛り上がった。
1.講演(ASI田口伸):ASIでは,米国の子供に品質を教える活動〔QFK=Quality for KIDS〕をノンプロフィット活動として実施している内容についての紹介と質疑が行われた。また,昨年の来会時に出題されたさまざまな事例の宿題について,研究会としての回答とそれに関するアドバイスがあった。
2.講演(立林和夫):2011年4月に学会誌に投稿された『「品質工学で用いるSN比の再検討」に関する議論』を基に,その見解とエネルギー比型SN比を提案した関西品質工学研究会メンバーとで,従来型SN比の問題点の整理,学会の見解の解釈,提案者に求める検討内容など,議論の整理と今後の研究の方向性について講演があった。
事例1「品質工学適用効果の金額換算方法」(富士通テン 田畑文夫):パラメータ設計などの改善効果が金額にどのように換算できるかを明確にすべく,損失関数を用いてアプローチした内容の紹介と相談が行われた。
事例2「品質工学教育教材の検討」(ナブテスコ 福井有朋):社内研修の概要の紹介と研修内容の見直し企画ならびに演習教材についての紹介とその内容について相談が行われた。
(パナソニック電工 木村哲夫 記)
(2011.08)
2011年6月10日(金)三菱重工高砂製作所において第205回研究会を開催した。出席者は42名であった。
午前中は三菱重工高砂製作所の工場見学を行い,タービン製造過程やMT法を活用している遠隔監視センターを見学した。午後は同会議室にて研究会を行い5事例について活発な議論がされた。
事例1 「地震予測と品質工学MTシステムの役割」(アングルトライ 手島昌一):技術的に予知可能な地震と岩石破壊時のAE波形での評価の関係,それによるMTシステムでの予測について報告があった。
事例2 「SN比の定義に関する考察と応用」(マツダ 武重伸秀):新SN比についての地球環境の観点からの考察と,分散の計算時に重み関数を導入して望小特性などもうまく説明できる提案があった。
事例3 「刃物評価を電力計測にして実施した事例」(リコーエレメックス 小玉幸生):マシニングセンタでの溝加工にて,刃物の寿命を延ばすために電力と切削量で切れ味を評価する実験を行った報告と,ノイズとなる刃物の劣化の方法についての議論と助言があった。
事例4 「モータ絶縁システム信頼性試験への機能性評価適用による評価期間短縮化」(三菱電機 安藤彰洋):モータの絶縁の評価期間が長いため,機能性評価を工夫して22.4%に短縮することに成功した事例について報告があった。
事例5 「近接センサの機能性評価」(村田機械 鐡見太郎):軸の回転数検出に用いている近接センサの購入でのデジタルでの機能性評価結果の報告があり,アナログでの評価方法や助言が行われた。
(シマノ 太田勝之 記)
2011年5月14日(土)第204回研究会を開催した。出席者は31名であった。

事例1「吸光分析装置のパラメータ設計」(タツタ電線 鈴木祥充):目的は大気中のCO2濃度の測定した。ファイバ型CRDSという方式のシステムを選択し,パラメータ設計を企画している段階である。目的機能はCO2濃度と計測結果の指示値だが,実験もこの機能で良いのではないか,誤差は温度や湿度のほかに大気中の他の成分を入れてはどうか,といった議論があった。

事例2「継竿剛性の安定化」(シマノ 三石 優):釣竿を持つ円周方向の位置によって剛性が異なってしまうと,フィーリングのクレームとなる。円周方向を誤差とした実験が紹介された。円周方向の剛性の差は作りこまれたものの素性で決まるので,チューニングの問題ではないか,との議論があった。

事例3「T法およびその改案法の汎化能力の検証」(三菱電機 鶴田明三):レーザー溶接その他の課題を題材に,T法とその改案法の汎化能力を検証してみた。改案法はおおむねT法(1)より汎化能力が高いこと,改案法は使い分けが重要そうであること,項目を増加させる改案法は特に汎化能力に劣るわけではないこと,項目選択は必ずしも汎化能力向上に寄与しないことがわかった。
事例4「シミュレーションによる許容差設計の取り組み事例の紹介」(パナソニック電工 木村哲夫):ある製品の重要品質項目に対する許容差設計の事例紹介があった。シミュレーション式は,特性値Yと要因X1〜X57の回帰式とした。許容差設計のための解析の結果,寄与率60%の要因を特定することができ,これに対処することで工場での直行率を98%にまで改善することができた。
(村田機械 鐡見太郎 記)
(2011.06)
2011年4月2日(土)日刊工業新聞社セミナーA会場において,第203回関西品質工学研究会を開催した。出席者は合計31名であった。
1.事例相談「電子写真プリンタのプロセス条件検討」(東レ:稲垣潤):業務用大型電子写真プリンタの印字速度向上のため,基本機能を電界量と現像量の動特性と考え,L18およびL16直交表によって実験を行った。現像トナー量は再現性良好であったが,印字品質特性(順位データ)はいまひとつであった。順位データの取り方や感応評価について議論が行われた。
2.事例相談「MT初めの一歩」(ヤマウチ:加藤敦士):プリンタ画像形成用ゴムローラ内径の安定性向上のため,材料(粘度等)等の工程データを用い,MT法で単位空間を良品率99%以上のデータとして解析したところ,材料データのSN比が高く,予想と合う結果が得られた。単位空間の取り方,MT法とRT法の使い分けなどの議論が行われた。
3.事例相談「ワイヤーボンディング工程へのMT法適用検討」(マクセル精器:近藤真澄):ICチップのパッド部に金属ワイヤを接合するワイヤーボンディングで,抵抗溶接用ツールの保全タイミングを予測するため電力波形をMT法で解析した。標準偏差が0になった項目を減らした結果,異常データの距離は単位空間との違いが得られた。項目の増やし方,データの処理方法などについて議論が行われた。
4.事例相談「積水化学における品質工学の海外展開」(積水化学:佐藤 聡):車などに使用するABS樹脂のシートについて,押出成形の生産量を増やすため段取換え時間の短縮を目的とし,時間と色の関係を基本機能としてL18直交表で色の変化を評価した。海外工場の事例であり,海外特有の取り組みなどについて議論が行われた。
5.事例相談「PLCのシステムプログラムのデバッグ」(村田機械:鐡見太郎):繊維機械のシステムプログラムのバグ出しを行った。L36直交表を3枚並べ,高い2因子網羅率により従来は3ヶ月のバグ出しが今回は14日でできた。デバック特有の問題点などについて議論が行われた。
(神戸製鋼 原 宣宏 記)
2011年3月11日(金)日刊工業新聞社セミナーA会場において,第202回関西品質工学研究会を開催した。出席者は合計31名であった。
1.事例相談「排水処理システム報告」(ヤンマー:伊勢村浩司):廃水を低コストで安定的に処理するシステムの開発を目指している。入力を時間とし出力を汚濁物の残存率として,ガラスフラスコによるテストピース実験を行った。確認実験での推定や再現性についての議論が行われた。
2.事例相談「溶接部の評価方法」(三菱重工:寺坂宏介):溶接条件の最適化のためパラメータ設計を行ったが,最適条件の結果が一番悪かった。これは,試験片の切出しが溶接部全体ではなく溶金部のみから切出したことが原因ではないかと推測される。試験片と試験方法についての議論が行われた。
3.問題提起「過渡応答によるロバストネス評価の一考察」(ITEQ:中野惠司):アクティブフィルタ回路のロバスト設計において,シミュレーションを活用した過渡応答の評価方法の考察があった。過渡応答での評価は広い周波数を短い範囲のみで確認できることが大きなメリットであるが,解析データの範囲をどこからどこまで使用するかを良く考える必要があることが提案された。
4.事例紹介「欠番直交表を用いたパラメータ設計の進め方と実施例」(コニカミノルタテクノロジー:芝野広志):滴下注入技術において滴下精度を向上させたい。L36-12欠番直交表を使用し,29因子から影響度の高い8因子を抽出し,L18直交表による本実験を行った。その結果,滴下精度は大きく改善した。更に効率向上のために,欠番直交表L36-9やL36-4との比較をしていく。
5.問題提起「リチウム電池の寿命対応」(原和彦顧問):リチウムイオン電池は,エイジングと呼ばれる初期に充放電を数回繰り返す作業を行うことで充放電の時間が安定する。このエイジングを消費者が行うことについて問題提起があった。
(シマノ 井上徹夫 記)
(2011.04)
2011年2月4日(金)日刊工業新聞社において第201回関西品質工学研究会を開催した。出席者合計30名であった。
1.話題提供「MT法による歯車装置の故障診断」(シマノ 井上徹夫):日本機械学会,RC241歯車分科会,WG3:歯車装置のメンテナンスに関わる岡山理科大学滝教授による論文の紹介である。圧電式加速度センサーをギアボックスに取り付け,振動計測したデータを用い,MT法によりD2 > 100 程度で異常と判断できる。大量生産品の評価や,異常の閾値について議論がなされた。
2.事例相談「食器洗浄機洗浄剤の洗浄力評価方法」(ニイタカ:生田直人):業務用食器洗浄機用の洗浄剤の評価に関する相談である。従来は,実際に洗浄機で洗浄して汚れの程度を評価していた。食器の種類,汚れの種類,放置時間等,多くのノイズを直交表に割付ける方法や,洗浄剤自体の評価方法について討議した。
3.事例相談「コーティング加工に於けるブラスト加工のタグチメソッド適用」(三菱重工:大泉幸介):金属表面の耐食性向上のために,まず,アンダーコートを行い,ブラスト加工した後に,トップコートを行っている。この中のブラスト加工についての相談である。途中の加工条件のみではなく,最終製品になるまでの評価を行うべきである点や評価特性について討議した。
4.グループ討議:2010年6月度研究会の田口伸講師からの宿題について,グループに分かれて討議した。
5.MT研究会「T法の考え方(SN比の問題,単位空間と信号空間)」(シマノ:太田勝之):T法でのSN比は,ゼロ点比例式を用いているが,原点次第でSN比は変化し,予測精度の評価には使えない。T法においては,項目,診断のSN比とも基準点比例のSN比の計算を行うべきではないか
。それは,エネルギー比型SN比では相関係数の二乗(R2)と一致する。T法での単位空間,信号データの使い方と,RT法やMT法での単位空間,信号データの使い方は異なるため混乱を招きやすいので,RT法,MT法の「信号データ」を「評価用データ」と呼ぶべきではないかとの議論がなされた。
(三菱重工 高濱正幸 記)
2011年1月15日(土)日刊工業新聞社において第200回関西品質工学研究会を開催。出席者は合計31名であった。
1.総会:2010年度の活動・会計報告が了承された。来期から,会長は芝野広志から太田勝之に交代し,幹事は,平野雅康,鶴田明三,高木正和が退任し,来期は,荘所義弘,鐡見太郎,原宣宏,高濱正幸,井上徹夫,木村哲夫(パナソニック電工)が努めることになった。2011年度の活動・会計計画が了承された。.
2.新春記念講演「全体最適を目指す技術者であれ」(原和彦顧問):
最近の企業の生産活動を見ていても,技術者の仕事が細分化されて,システム全体で評価することが欠如しているのが現状である。技術者はサラリーマンではなく,マネジメント戦略を考えることが大切である。
3.グループディスカッション:4つのグループに分かれて,グループディスカッションを実施した。時間の関係で全体討議はなし。
この後,場所を大阪キャスウルホテルに移し,新年会を実施,活発な議論を行った。
((同)オフィスワイ・エス 清水 豊 記)
(2011.02)
2010年12月10日(金),第199回研究会を開催した。出席者は36名であった。
(1)招待事例「T法(1)を使った不動産評価のまとめと課題」(吉野不動産鑑定事務所 吉野荘平) @T法(1)の有効性について,A相関係数を利用した項目診断,BT法(1)を適用する上での留意点,C欠損値(建物付の取引と更地の取引データが混在する時)とT法の有効性に関しての話題提供があった。不動産鑑定にどう用いていくのがよいか議論がなされた。
(2)事例相談「購買業務の中で品質工学は何ができるか」(オムロン 中野一志)
 コニカミノルタの物流業務への品質工学適用を参考に購買業務にどう適用していけば良いか計画段階での相談である。購買業務のあるべき姿から,納期遅れを予測し対応できる方法について議論がなされた。
(3)事例相談「難加工部位の共穴加工の高能率化」(三菱重工業:橋本晋吾,大泉幸介)
 異なる材料の合わせ目部に共穴加工を行う場合の切削条件を最適化する実験の相談である。評価方法,誤差因子,サンプル製作方法が議論がなされた。
(4)事例相談「SN比の整理」(マツダ:武重伸秀)
 SN比の歴史紹介,第3版実験計画法からSN比を再定義,目的に適う定義式を導出,計算に必要な2つの要素から一般式を導出した。これまでのSN比との使い分けの提案の報告があった。モータ評価の事例も紹介され,SN比に関する議論がなされた。
(村田機械 荘所義弘 記)
2010年11月5日(金),第198回研究会を開催した。出席者は32名であった。
(1)事例相談「品質工学を用いた廃水処理システム開発」(ヤンマー 伊勢村浩司)
 バイオマスガス化発電システムで発生する廃水処理方法の最適化についての相談である。廃水処理の研究なら基本機能は化学反応,可能なら廃水処理の研究ではなく発電システムの検討が先,などのアドバイスがあった。
(2)事例相談「RFIDチップ埋め込み工程への品質工学適用検討」(マクセル精器 近藤真澄)
 樹脂製容器にRFIDチップを埋め込む工程の最適化の相談である。成形の問題なら,チップなしのテストピースでの評価,成形時にチップがダメージを受けるなど通信機能に影響がある場合はチップとしての機能を評価する,などのアドバイスがあった。
(3)話題提供「MTSシンポジウムでの誤圧についての紹介」(オフィス ワイ・エス 清水豊)
 応用計測研究所(株)主催のMTシンポジウム(9月7日)で紹介のあった「誤圧によるパターン認識」について紹介があった。紹介のあった方法はまだ検討段階の要素が残っており,不明な点も多いとの認識に至った。その上で,MTシステムは方法が違っても評価方法は同じであるべき(総合SN比のみ)で,新しい方法の妥当性をT法(3)の推定結果との相関で判断するのはまずい,という意見があった。
(4)グループ討議
 4グループに分かれてグループ討議を行い,合計で14テーマについての議論を行った。「釣竿の基本機能」「システム選択とシステム創造」の2テーマについて,引き続き全体討議で議論した。
(村田機械 鐡見太郎 記)
(2011.01)
10月8日(金)ヴィアーレ大阪において,第8回関西地区品質工学シンポジウムを開催し,一般参加を含め97名が参加し,講演と事例に対し活発な意見交換が行われた。
1.特別講演「アジアの製造業品質工学の企業での活用」(アイテック社長 井上清和):海外での品質工学普及状況が紹介された。中国,台湾,韓国,米国,日本などを比較して経済状況,有力企業の経営戦略,各国での品質工学の普及状況と問題点をわかりやすく紹介された。
2.招待事例「トヨタ自動車における品質工学の取り組み」(トヨタ自動車 小杉敬彦):2006年からの品質工学の導入経緯と状況,そして最適化事例も紹介された。既存活動と連携や品質工学は「火の用心」で「火消し」ではないことが強調された。
3.事例1「品質工学の活用によるヘアスプレイ樹脂つまり改善検討」(サンスター 米谷明雄):従来,長期間のテストが必要であったスプレイのつまりを,パラメータ設計により短期間で改善した事例が報告された。
4.事例2「シリコンオイル乳化工程の検討」(ネオス 中尾誠仁):樹脂成形に用いられるフッ素系離型剤の乳化工程の最適化事例が報告された。小さい粒子を作ることが必要で,最適化により工数が削減できた。
5.事例3「T法による光ケーブルの耐蝉性評価」(タツタ電線 鈴木祥充):光ケーブルへのクマゼミの産卵による被害を削減するため,試験小屋にセミを放ち,21種類のサンプルにおいて疵数と深さを測定し,T法で解析した事例が報告された。
6.事例4「ガスタービンプラントの異常予兆検知」(三菱重工業 三上尚高):各プラントの遠隔監視にMT法を用いて異常診断を行うようにした事例が報告された。従来は多岐にわたる監視項目のそれぞれについて正常パターンを研究しなければならなかったが,小さな兆候の早期発見にMT法によるパターン認識が有効で,マハラノビス距離のみで自動判定ができるようになったと報告があった。
7.まとめと講評(原和彦関西品質工学研究会顧問):それぞれの講評と「全体最適」の大切さのまとめがあった。
(シマノ 太田勝之 記)
9月4日(土),日本規格協会関西支部において第196回関西品質工学研究会を開催した。出席者は34名であった。
1.事例相談「プリンタ用ピントラクタの検討」(東レエンジニアリング 稲垣 潤):業務用プリンタの構成部材で,送り孔つき用紙を定速搬送するためのピントラクタである。現行品が製造中止となり,その代替品採用する機会にあわせて速度アップのため用紙の重連化を検討したが,スタック不良,用紙破れなど搬送不良が発生した。早く原因を調べたいという社内設計担当者の要望に対し,L18直交表を用い,出スタック不良の程度を出力として,望小特性で解析した。用紙の送り孔をピンへ深く挿入しすぎたことが原因であることが分かった。問題解決と実験効率を優先するなら今回の静特性評価で十分だが,全体最適という観点から,動特性での評価やプリンタの印字精度という本来機能での評価についても議論した。
2.事例相談「ガスタービンプラントの異常予兆検知」(三菱重工 高濱正幸):ガスタービンコンバインドサイクル発電とは,ガスタービンで発電し,その排熱で発生させた蒸気で蒸気タービンを回転させもう一度発電する方式である。今回はMT法を用いて,トラブル発生を未然防止できた。MT法を用いることで,マハラノビス距離(MD)という一つの尺度で診断できることが大きなメリットであり,異常時には項目診断で異常要因を診断することも可能である。課題は,閾値の決定や,さまざまな運転状態への対応である。関連して多重共線性の問題など,MT法適用の際の詳細な事項について討議した。
3.事例相談「“品質工学に用いるSN比の再検討”の審査部会コメントに対する解説」(三菱電機 鶴田明三):エネルギー比型SN比の報文投稿の経緯を紹介し,審査部会よりコメントおよび補足が付されていたので投稿者よりこれに対して解説した。η21cとηEの違いは自由度nk-1の有無だけで,利得の考え方や技術的意味は変わらない。また,下流の予測は無限母集団に対する推定ではなく,下流の再現性で確認されるべきであるなどの解説があった。「正しいかどうかではなく,どちらがより効率的かで議論してほしい」という田口の言葉を引用し,今後は会員各位の意見を求めることを考えるとした。
(タツタ電線 高木正和 記)
(2010.10)
2010年8月7日(土),日本規格協会関西支部において第195回関西品質工学研究会を開催した。出席者は32名であった。
1.事例相談 「シーケンサのOSのデバッグ」(村田機械 鐡見太郎):繊維機械はカムなどのメカ制御から独立したアクチュエータで制御する方式に変わってきており,ソフトウェア制御が増大している。その制御ソフトの検証に直交表を活用する計画について議論した。システムの入出力ではなく,OSの入出力が何かをしっかり定義するべきであり,そのためにはOSの機能や働きをはっきりさせるのが良い,どのくらいのテスト時間や工数が可能かを決めてそれにより直交表のへの割付をするべきである,などのアドバイスがあった。
2.事例相談 「樹脂シャフト振れ改善」(村田機械 荘所義弘):トナー搬送用スクリューは,金属製から樹脂製の置き換えが進んでいる。高い寸法精度が要求されるが樹脂製は金属に比べて高精度化が難しい。特に振れの精度が要求されるので成形条件を検討してこれを改善する実験計画について議論した。ノイズが製造段階のものばかりなので市場のノイズもとるべきである,測りやすくて成形しにくい形状のテストピースを使うべきである,強度も必要なのでフックの法則の評価をするのが良い,などのアドバイスがあった。
3.事例相談「物流業務への品質工学活用」(コニカミノルタ 芝野広志):T法(1)による倉庫作業時間の予測がテーマである。このテーマの目的は,作業工数を予測するとともに,間接業務にまで品質工学の適用分野を広げることである。管理・間接業務は大きな成果が期待できるしデータがたくさんあるが,IT化が進んでいるものの仕事のやり方は変わっていない。入庫場所や個数によって倉庫作業時間を予測し,また出荷先や個数によっても倉庫作業時間を予測した。SN比は高いがグラフからは精度が高いようには見えないので予測精度はSN比だけでなく相関係数が高いかどうかが重要,重要度は重みだけでなくηを見たほうがよい,などの意見やアドバイスがあった。
4.グループ討議:4グループに分かれてグループ討議をした。全17件の相談があった。その中の1件を全体で討議した。入力と出力(縦軸と横軸)をどうとるかについて活発な議論がされた。
(コニカミノルタ 平野雅康 記)
2010年7月10日(土),日本規格協会関西支部において第194回関西品質工学研究会を開催した。出席者は33名であった。
1.講演「大学での研究・産学連携の問題点などに関係する研究遂行上の問題点」(大阪府立大学 内藤裕義):企業と大学の研究者を動員して「課題解決型」の研究を展開していく必要性が提案された。また,最近の学生のメンタリティへの対応や,大学の研究・教育以外業務の多さなどの苦労話にも及んで問題点について説明された。
2.話題提供「技術評価の考え方の再整理」(マツダ 武重伸秀):QES2008の岩崎浩一郎の基調講演を聞いて思うところがあり,田口哲学を再整理した。その中で感じたのは「企業⇒消費者⇒地球環境への視野の拡大」が重要であり,その評価方法の創出が課題である。公害評価は,「自然の営みをどれだけ乱したか」で評価することができ,これは使った自然エネルギーのうち,自然界に捨てているエネルギーの総和を評価することで可能になりそうである。
3.事例相談「オンライン品質工学(検査設計)での疑問点」(富士通テン 田畑文夫):検査設計で臨界不良率を求める際の品質上の損失の金額をどう見積もるべきか議論した。不良品には損失AのものからA0のものまであるが安全側に見てA0で計算するという意見と,許容差ΔにすでにA0は考慮されているので,損失は許容差Δの損失Aでよいという意見が出た。最終的には各企業の考え方が反映されるべきであるとした。
4.話題提供「タグチの視点で切る技術の悩み」(村田機械 鐡見太郎):市場不良を起こした製品を,機能性評価で追試してみるとすぐに機能しなくなることが分かった。上流で機能性評価やロバストネスの作りこみを行えばよい問題であるが,なかなか社内で理解が得られない。企業では「技術そのものに対する理解」がボトルネックになっており,上記のような問題を発生させている。最後は「人づくり」であろうと考える。
(三菱電機(株)鶴田明三 記)
(2010.08)
2010年6月11日(金),第193回関西品質工学研究会を開催した。出席者は38名であった。
1 講演「ロバスト・アセスメント─機能性評価」(ASI 田口伸):年1回恒例となった田口伸を招聘しての講演で,ASIでのDFSSの内容の紹介があった。また,提示された研究会用の演習課題を,4Gに分かれ,Gディスカッションを実施した。。
2 事例発表
(1)「ソフトデバッグについて」(富士通テン 内村英郎)
:ソフト評価支援ツールAutoCOVの紹介である。評価漏れが少なくなるように評価手順を生成する。ソフトデバッグの各因子は直交の必要はなく,一度でも組合せが出現すればよい。これにより,テストパターンの大幅削減,因子数・水準数の制限なしを実現した。
(2)「介護用品(スマイレット)の改善検討」(村田機械 荘所義弘):
寝たきり状態になった人の排泄物を自動排出処理する装置の問題点を改善したい。樹脂製カップに専用のおむつをセット,排泄物を自動で検出,洗浄水で回収,周辺の洗浄を無人で行う。問題点は,@回収できない排泄物がある。A洗浄水がもれる。Bカップにおむつをセットしにくい。本事例に対して,回収能力は排泄物の出た量と回収量を,もれは水の使用量と回収量を測るべきではないかとの意見があった。
(3)「シックスシグマを活用した技術開発プロセス」(マツダ 山田洋史)
:2001年に導入のSS活用の紹介である。
(4)「溶接部品の機能性評価における解析方法の検討」(マツダ 渡辺忠俊)
:製造上の誤差条件に対し,ロバストな溶接条件AとそうでないBを用い,パイプとプレートの接合試験体を製作し,機能性評価を実施した。機能性評価を用いて市場での劣化を評価できる目処がついた。
本事例に対して,ネジリであればフックの法則で溶接部全体の評価になるとの意見があった。
(5)「損失関数とはなにか」(三菱電機 鶴田明三):損失関数を活用する際の課題や現実に使用されていない理由を議論した。エネルギー比型SN比を採用すると補正なしで損失関数や変化率と連携できることが説明された。
((同)オフィスワイ・エス 清水 豊 記)
2010年5月8日(土),第192回研究会を開催し,事例検討を行った。出席者は36名であった。
(1)「社会損失を最小化する品質工学」(ブラザー工業 加藤重己)
:過去に体験した家電製品などの不具合のさまざまな事例を題材として,社会損失を最小化するためには,企業や技術者としてどのようなことが重要なのかを検討してみた。機能性評価を実施すれば解決できるかについて議論が行われた。
(2)「シミュレーションと品質工学の連携による開発プロセス改革」
(コニカミノルタオプト 平野雅康)
:社内で実施された光学関連の事例をもとに,シミュレーションによるパラメータ設計の留意点などについて説明された。シミュレーション活用に抵抗はないが,ロバスト設計という概念が希薄であり,これらの問題についてシミュレーションによって光学系の機能性評価を行う場合の工夫について議論された。
(3)「発電プラント部品の組み立て条件最適化」(三菱重工 森田龍介):工場内で組み立てた製品を一度分解して現地へ搬送し,現地で再度組み立てを行うと,工場での状態(トルク値)が再現できない課題が発生している。現地でのトルク値が低下する問題についてパラメータ設
計を実施した。最適条件では,トルクの上下限規格をクリアした。
(4)「透明タッチパネルの表面平滑性向上」(パナソニック 中上裕一)
:透明タッチパネルの最表面フィルムの接合過程で,熱加圧している影響を受けて表面が変形し,平滑性が損なわれる不具合がある。平滑性の評価は干渉縞を目視評価し,ランク付けしている。加工工程の諸条件を制御因子としてパラメータ設計を実施し,最適条件では狙い通りの
改善効果を得た。本事例は,6月の品質工学研究発表大会で発表する。
(5)「EMC対策への品質工学的アプローチ」(パナソニック 中沢弘一)
:製品のEMC対策は,試作品を特殊な場所(EMCサイト)に搬送し,そこで評価して対策案を検討し,対策したものを再評価するという手順が一般的に繰り返されている。EMCサイトへの搬送や測定の煩わしさなどが課題であり,本事例では,それらの課題に対する簡略化方法を,パラ
メータ設計を活用して検討した。重要な周波数(数か所)でのEMC測定値を評価特性とし,望目特性での解析を実施,最適条件では現行よりマージンを広げることができた。本事例は,6月の品質工学研究発表大会で発表する。
(コニカミノルタテクノロジーセンター(株) 芝野広志 記)
(2010.06)
2010年4月2日(金)に第191回研究会を開催した。出席者は30名。
(1)「品質工学とマーケティング」(タツタ電線:高木正和):マーケティング(販売促進)に品質工学的な売り込みをしたい。新材料の販売方法に関して,品質工学を利用するアイデアが議論された。今後,効果の判断に長期間必要な場合にどういう評価結果を持ってお客様に売り込むかを考えていく。
(2)「ドライアイスショットブラスト装置の使用条件の評価」(三菱重工:寺坂宏介):ドライアイスショットブラスト装置の塗装除去効率を評価検討した結果についての相談があった。使用条件の評価方法,実験誤差の与え方,解析方法に関する討議が行われた。
(3)「何を計れば良いか?」(コニカミノルタ:芝野広志):過去事例でも何を計れば良いかを考えると,事例の価値が違って見える。過去に自分自身が関わった@OA機器の温度上昇対策,A材料の均一分散技術の開発,B現像剤粉砕工程の最適化の3事例に対して,客が欲しいもの
を考え,目的〜結果を考え直すと,どう研究を行うべきであったかについて議論が行われた。
(4)「微小信号での機能性が重要な場合の評価方法」(三菱電機:鶴田明三):従来のSN比の評価方法は,微小信号に対する機能性評価が軽視される点を指摘し,動特性の機能は設計目的により2種類の考え方があることを仮説し,新しい観点の提示があった。広い信号水準範囲で出力の変化率が重要な場合,信号水準毎の損失関数の平均値から計算した総合損失SN比で評価することが提案された。提案の評価方法に対して,さまざまな議論が行われた。
(村田機械 荘所義弘 記)
2010年3月6日(土)に第190回研究会を開催し,事例討議とグループ討議が行われた。出席者は28名。
1 事例討議
(1)「コニカミノルタでの推進施策報告」(コニカミノルタテクノロジーセンター 西川智晴):コニカミノルタでの汎用技術(QFDやTRIZを含む)の普及・推進について報告があった。これに対し,それぞれの手法を教えることは構わないが,単に手法としてそれぞれの開発フェーズを分担するのではなく,目的から考える技術者を育成することが大切だという意見があった。
(2)「偏相関行列を使ったMT法」(オフィス ワイ・エス 清水 豊):MT法の相関行列のかわりに,偏相関行列を用いた方法が紹介された。フィッシャーのアイリスのデータに適用してみたが,判別精度は普通のMT法の方がよかった。多重共線性の回避の一手段にもなりうるので,有用な事例が今後出るかも知れない。
(3)「多水準での効果的なデバッグ」(シマノ 太田勝之):ソフトのデバッグで,水準数が非常に多い信号が存在する場合がある(例えば,電車の駅の券売機)。このような時,組合せ実験では3水準で代表させ,残りを1因子実験する方法が知られているが,多水準の信号を直交表の外に出し,1因子実験と他の信号をわりつけた直交表との組合せでテスト計画を作る方法が提案された。できるだけ少ない実験数でバグのリスクを小さくすることが期待できる。
2 グループ討議
4グループに分かれてグループ討議が行われた。その中から,次の2テーマについて全体で討議した。
(1)「3水準間の水準ずらしをどう考えるか」(オムロン 真崎藤義):3因子間の水準ずらしをどう考えればよいかについて問題提起が行われた。
(2)「銅板のレーザー溶接の評価について質問」(パナソニックエレクトロニックデバイス 林 千春):銅板のレーザー溶接の評価についての機能の考え方,標準条件N0をどのように設定するかについて議論が行われた。
(村田機械 鐡見太郎 記)
(2010.04)
2010年2月5日(金)に第189回研究会を開催した。出席者は23名であった。
1「部品製作コスト予測システムの研究」(村田機械 鐡見太郎):コストの80%が設計で決まるが,その見積もりには経験が必要である。そのため,寸法などの図面情報を元にT法(1)を使って予測を行い,相関の考慮や項目選択などをした場合としない場合などで解析を比較した。その結果,従来方法より予測精度が向上した。類似形状で分けてT法をした方が,さらに精度が上がるのではないか。安い製品を単位空間にしているが,いっぱい加工しているものを単位空間にしてはどうか。これで設計者が簡単に見積もりできればすばらしいシステムであるなどの意見が出された。
2「ドライバーPCBとモータの破損」(村田機械 鐡見太郎):糸を作る機械(精紡機)で,糸を一定速度で引っ張るためのモータの故障対策を行ったが,前兆もなくいきなり故障する場合は,どのように評価したらよいかが議論された。回路は,電流−電圧特性で測れないのか。通常の定格以上の電圧をかけたときの応答をみてはどうか。回路の機能ではなく,もっと大きなシステム全体で見てはどうか。たとえば,モータが糸を引っ張るところまで評価してはどうかなどの意見が出された。
3「大丈夫か? 日本の技術」(村田機械 鐡見太郎):最近,買い換えた自宅の電子レンジでさまざまなトラブルが続出したことや,それに対する対応のまずさなどが報告された。そのことから最近の国内メーカの技術についての議論がなされた。
4グループ討議:午後からは,小グループに分かれ,それぞれで活発な議論が行われた。個別の事例相談の他,「QEの推進方法」や「水準ずらし」や「MT法」などの不明な点について,広範囲な内容の話し合いや助言がなされ,その中の2テーマを全体で討議を行った。
(1)「コイルの端子の溶接の接合評価」(オムロン 中野一志):TIG溶接の最適条件を見つける場合の評価方法は何がよいかとの質問に対し,電流−電圧特性では難しいなら,ワイヤーの強度を評価する方法や溶接の機能ととらえ,溶接の電力の安定性を評価するなどの意見が出された。
(2)「SN×β=0ならノイズの影響なしと言えるか?」(三菱電機 鶴田明三)
:変位−応力特性で,途中で破断した場合,破断以降のデータをゼロにしたが問
題がある。標準SN比で解析した場合,N1とN2が入れ替わる。その過程で,SN×βとSeのそれぞれがもつ意味があいまいで,分解することに意味がないと気づいたと報告された。標準SN比では,ノイズが与えられていない状態がN0であり,N1が新品状態なら平均をとらずにそれをN0にする。変位を信号,応力を出力にとっているが,破断した場合は信号と出力を逆にするとよいなどの意見が出された。
(シマノ 太田勝之 記)
2010年1月16日(土)に総会に引き続いて第188回研究会を開催した。出席者は47名であった。
1 新春記念講演(原和彦顧問):消費者は賢い。消費者の満足を得られない製品は淘汰される。生活者の満足を得るために活動できているか,自分に問うてほしい。そこに品質工学が貢献しているか,自問してほしい。顧客が満足する機能性を評価するためには,顧客の求める機能が何であるか知らなければならない。「生活者のウォンツ」こそが機能である。顧客の声(VOC)が目的機能である。本研究会で是非とも,このことを研究してほしい。手段,選択できるシステムは無数
にあるが,顧客のウォンツに即した目的機能をしっかり考えてほしい。市場ノイズに強い設計がロバスト設計(二段階設計)である。信号のことは考えないで,ノイズの影響だけを考えようというのが標準SN比である。一段目のパラメータ設計の極意は「システムは複雑」であるべきで,いわゆる「無用の用」を働かせるのであるとの講演が行われた。
2 SN比意見交換会:意見交換会の背景と目的について,鐡見太郎,鶴田明三の両氏から概略の説明があった。エネルギ比型のSN比については2007年に最初の提案があり,2008年の研究発表大会では実行委員長賞を受賞した。より深い議論を喚起するため2009年に学会誌に投稿したところ,否の判定が下されたという経緯がある。今後の品質工学の発展のためには,この時期に十分な議論が必要と考え,斯界の有識者を招いた意見交換会を開催した次第である。
有識者として招聘した手島昌一,細川哲夫,中野惠司,日座和典の四氏を交えて議論した。従来のSN比(β2/σ2)であれば機能性−感度校正−損失を一貫して考えられるなどエネルギ比型SN比にない利点がある。SN比がデータ数の影響を受けるのは当然であり,それを考慮して実験すべきである。しかし,SN比に対しては多くの考えがあり,使う者が適宜択すればよい。実際は個々のテーマで計算方法をアレンジしている。二十世紀型SN比はエネルギ単位系で計算できるようになっていたが,二十一世紀型SN比は機能に対するノイズの影響のみを考えており,計算式がエネルギ式から外れていると考える。田口玄一も,もともとは通信のSN比からの類型として以下のように定義式を提案されていた。

η=10log──────
Sβ×N+Se

 =10log───
SN
これはまさにエネルギ比型SN比である。ただ,学会誌に掲載されることを目指すなら,研究テーマをエネルギ比型SN比の論考とせず,別テーマの事例研究の中で,エネルギ比型SN比を使用することが提案された。あるいは,エネルギ比型SN比を「通信のSN比」とするなど,改名案が出された。関西研究会以外の研究会からも事例が出るよう働きかけることも提案された。審査部会との議論を呼びかけたが現時点では実現していない。また,学会誌の会員の声のような記事では敬称の有無は著者の自由筆記で良いが,著者の断りなしに編集側が改編した場合は著作権侵害となる恐れがあるなどの議論が行われた。
(タツタ電線 高木正和 記)
(2010.02)
2009年12月4日(金)に第186回研究会を開催した。出席者は34名であった。
1.テーマ検討1 「オンライン品質工学による最適在庫量の検討」(コニカミノルタ 芝野広志):物流業務への品質工学の適用の事例相談があった。目的は,『在庫量の適正化』と『倉庫作業の効率化』である。『在庫量の適正化』は,計画に対して受注量の変動が大きく,通常は船で輸送しているが受注量が計画を超過した場合は空輸で対応しているが,空輸代金が高いので在庫でも対応することを考えている。在庫は保管経費などの費用がかかるため,総費用が最小になるような在庫量を決めたいので,オンライン品質工学の考えかたを適用しようと考えている。『倉庫作業の効率化』は,倉庫での入出庫作業時間を分析して,作業の時間短縮や効率的工数配置につなげるため,日々の入出庫記録のデーターからT法で作業時間を予測しようと考えている。これに対し,倉庫作業の効率化では,作業時間以外のデーター(例えば,人や曜日など)を使うべきであるなどのアドバイスがあった。
2.テーマ検討2 「項目選択に使う直交表の検討」(積水エンジニアリング 佐藤聡):MTシステムの項目選択や項目診断に使う直交表について調べた事例報告があった。4の素数倍の直交表は交互作用が分散しているので良いと言われているが,今回は4の素数倍の直交表とPaley法で作った直交表の交絡を調べた。結果としては,Paley法で作った素数べき乗系直交表(L32,L128)も交互作用は各列にほぼ均等に交絡しており,MTシステムに使うには,Paley法で作った直交表であれば4の素数倍,素数べき乗系のいずれでもよいといえる。但し,Paley法で作った3水準の直交表では交互作用は特定の列に交絡する。項目数が少なくても,L128のような十分大きい直交表を使えば特定の列への交絡が少なくなるので都合がよいなどのコメントがあった。
(コニカミノルタテクノロジーセンター(株) 平野雅康 記)
2009年11月7日(土)に第185回研究会を開催した。出席者は37名であった。
1 テーマ検討1 「パッド印刷の安定性の検討」(マクセル精器 近藤真澄):パッドと呼ばれる特殊なゴムを用いた凹版印刷技術について,転写性を基本機能とした事例紹介があった。併せて外観についても望小特性で評価した。利得の再現性,評価方法について議論した。利得の再現性は得られず,原因としてノイズの因子数が少ないこと,印刷の最初の10ショットを捨てている点が指摘された。これについては,予め誤差の影響を調べたり,最初の10ショットを過渡応答として評価することが提案された。また,印刷であれば色の品質(濃淡ばらつき)についても評価すべきとの意見が出された。評価方法については,信号の大きさに留意すべきで,値の差が大きければ,信号の大きいもの,小さいものでそれぞれ計算してもよいとの示唆があった。
2 テーマ検討2 「オンライン品質工学 検査設計の適用」(富士通テン 田畑文夫):工程検査要否の基準として,臨界不良率の求め方について,事例相談があった。「検査コストが市場コストを下回れば,検査不要としてよいか」という疑問があった。これに対して,以下のような意見が出された。不良率の実力レベルを測る検査は常に必要であり,「検査不要」という考えはない。自社からの出荷規格をユーザの受入規格よりも小さくすべきであり,自社工程の規格値は出荷規格よりもさらに小さくするのが普通だ。クレーム処理費用に加えて機会損失をどう見込むかが重要で,会社によって2倍〜5倍とさまざまである。
(タツタ電線(株)高木正和 記)